記憶 ―惑星の黙示録―
紛れもなく…
アランは愛里を見ていた。
――…トントン。
部屋の扉が叩かれて。
そう…
私はこれから何が起こるのかを、知っていた。
その叩かれた扉を開くのは、過去の私なのだから。
洗礼を受けてはいないのに。
アランの心が、
私の心に入って来る…
――あぁ、早く…
早く、あの二人を逢わせてあげてくれ…――
その想いに答える様に、
過去の私が扉を開く。
扉の向こうから現れたのは、
絵美の兄、梓さん…
…ほら。
私の知っている光景。
私の見たものと違う角度から、もう一度その光景を見る…
私はここに居るのに、目の前に自分が居る…
それは、
不思議な感覚だった。
――アズ、アズ…
二人は…
もう大丈夫だよね…
どうか、アイリを幸せに…――
抱き締め合うあの二人を見つめながら、アランの心が複雑な色に染まるのを…
私は、感じていた。
寂しい。
切ない、苦しい…。
本当は…
自分もこの場所に居たかったに違いない。
アランは愛里に特別な感情を抱いていたんじゃないか、そうも感じた。
アイリって、愛里…?
アズって…