記憶 ―惑星の黙示録―
――…ドンッ…!!
「…な…な…お、奈央ーっ!?」
「私の体」は、
どこに在るのか…
その問いの答えは、ここ。
『赤い血を流して、アスファルトの上に倒れていた。』
これが、真実。
「…奈央!な…お…ッ!?…誰か!救急車ッ!!奈央…!」
困惑して涙を流す愛里。
私に触れたくても触れられない、震えた手。
にゃぅ…
ぴょこりと私の胸元から顔を出した猫は、私を見つめて弱々しく鳴いた。
無事だったね、猫ちゃん…
車道に飛び出しちゃ駄目じゃない。
愛里を悲しませちゃ、困らせちゃ、
…駄目じゃない?
にゃぅ…みゃぁ…
ほら。
何を言ってるか分からない。
言葉の通じない相手は嫌い。
子供も、
動物も、…嫌い。
愛里は猫を無くさずに済んだ。
だから、悲しまないよね?
幸せになれるよね?
「…や…やだ…嘘でしょ…!?目を開けてよ、奈央ッ!奈央ぉおぉ!!」
なんで、
泣いてるの…?
「私」を、無くすから…?
私、間違った…?
じゃあ、何が正解だったの?
愛里を悲しませない方法は無かったの?
朦朧とする意識の中で、
「私」はそんな事を考えていた。