記憶 ―惑星の黙示録―
「…ほら、奈央。この河を越えれば、例の街だよ?」
そう下を指し示すアランに頷き、きらきらと光る河の水面を見つめながら…。
「――…あっ!?」
そんな色気もクソも無い声をあげる私に、呆れ顔のアラン。
「…何…変な声出すなよ…」
「――…鬼っ!鬼は!?マズイんじゃないの!?」
そうよ…
あの、鬼さん。
何だっけ…、ほら。
『力を無くした者』
『行き先を見失った者』
『時は満ちている』とか…
あの鬼は、アランを待つって言って境界線に留まったままのはず。
「あぁ。危なかったんだよね~?次の世界への扉が閉ざされてしまったら、俺は旅の途中で行き先を無くしちゃうから~、魂の力も無くしちゃって~…」
パクパクと言葉を失う私の横で、アランは変わらずヘラヘラと言葉を続けた。
「…旅を放棄して想い出に囚われた者はさぁ、罰として『想い出』も感情も消されてー…、はい!掟に縛られるしかない、新たな『鬼』の誕生ってわけ。」
「――はい!って、あんた!かなりヤバかったんじゃん!」
笑って話せる内容じゃない。
アランが洗礼を受けてから、どれ程の時間が経ったの?
『時は満ちている』って事は、期限ギリギリ…?