記憶 ―惑星の黙示録―
「それをいい事に、風たちはいい気になって自由に吹き回っているふりをしているし、世界中の半分くらいの人はそれに騙されているんだな~。」
俺は騙されないぞ、と言わんばかりにリュウは笑った。
「へぇ…、私の世界の風も実はそうなのかもしれないね…、なんて。」
自分でも無意識に口に出していた。
22歳にもなって!
何言っちゃってるの、私。
現実的には、風は…
あ~…
そんな常識、正直どうでも良くなっていた。
私の持っているこんな常識、
誰が作った?
――知らない。
ただ、そう教わったから…。
…もう、
常識を捨てればいいんでしょ!?
鬼まで出て来たんだから、私の常識なんて通用しないよ。
だって、夢の中だし?
とにかく、
私は先程までの恐怖もすっかり忘れて上機嫌だった。
飛行機でも乗らない限り、空なんて滅多に飛べるもんじゃない。
「…気持ち良い…」
空を見上げるのは、
昔から大好きだった。
幼い頃からの願望が、
空に対する憧れが、
今、私にこんな夢を見せているのかもしれない。
腹を下に、まるで泳ぐように手を広げると穏やかに風を受ける。
片方の手は、しっかりとリュウと繋がれたまま。