記憶 ―惑星の黙示録―
もう片方の手に違和感を感じて私ははっとする。
握られた手の中の、物。
…しまった。
落ちてた鈴、握ったままだったんだ…
誰の物か分からないけれど、持ってきてしまった以上こんな空の上から捨てる事も出来なくて…、
私はひっそりとズボンのポケットに忍ばせた。
「奈央~、このまま風の道を利用してあの鉱山を越すんだよ~?」
遠く、指差す方向にリュウの言う山があった。
「あれの名前は、プエル鉱山。」
「…本当にあれを越すの?世界一のエベレストなんかより全然大きいんじゃない?だって、あんなに遠いのに大きい。…まぁ、実は見た事ないけど。」
リュウは不思議そうに首を傾げると、
「えべれすと…?あぁ!奈央の世界の。」
そう一人で納得し、続けて言った。
「この世界は、いつでも空間が歪んでいる。遠い物が大きく、近い物が小さく見える時もある。」
「はぁ…。」
「奈央の世界では、この反対が一般的だよね?」
私は首を縦に大きく振って、興味深く頷いた。
「普通は、遠い物は小さく、近い物は大きく見えるよね?」