記憶 ―惑星の黙示録―
「…ぇ、いいよ!抱き方分かんないって…」
そう焦ってテーブルから身を引く私に構わず、猫は愛里の手をすり抜けた。
「…ぁ、こら!」
お行儀悪くちょこまかとテーブルの上を歩き愛里に怒られた猫は、困った事に…
私の腕の中で落ち着いた。
にゃぅ…
そう愛らしくつぶらな瞳で見上げられても、
…どうしたらいいの、コレ。
愛里に「助けて」と視線を送っても、微笑ましく私たちを見ているだけ。
動物は苦手だった。
…でも、なんか意外と可愛い?
鮮やかだった橙色の夕暮れが少し陰り出して…
肌寒い風が、もうすぐ夜だよと告げ始めていた。
「…暗くなって来たし、そろそろ行こうか。愛里、これからデートでしょ?」
私がそう切り出すと、愛里は腕時計を確認しながら謝った。
「…うん。ごめんね、慌ただしくて…」
……あ…れ…?
どこを見るでもなく、動きの固まる私に愛里も立ち上がる動きを止める。
「…どうしたの?奈央…」
どうしたの?
どうしたの、私…
違和感…
「……なんか、デジャヴ…?」
この会話、
前に…
一度あった気がするんだよ…
この状況…
何回か、見た気がするんだよ…