記憶 ―惑星の黙示録―
ぽかん…と口を開けて、
猫を食い入る様に見つめたのだけど、「にゃぁにゃぁ」と鳴くばかり…。
いやぁ…
いやいやいやいや…
私やっぱり、
疲れてるのかも…
「…ぅわぁあぁん…」
そんな子供の声に目は向いて、
すぐ横で泣きわめく我が子を母親がなだめていた。
「どうしたの?僕…」
子供好きの愛里が膝を着いて話し掛けると、母親が困った様に笑いながら話し出した。
「…大した事じゃないんですよ…。雨でここに駆け込んだ時に…手に持ってた風船を、空に放してしまったの…。」
「そうなんですか…」
母親が指差す空を、
私たちは揃って見上げた。
橙色の空に昇るのは、
「赤い風船」――…
にゃぁ…?
『ねぇ、あの赤い風船も、月にいくにょよ?』
「…そうなの?」
風船を目で追いながら無意識にそう問う私に、猫は「にゃぁ」と答えた。
はっ…!?
猫と愛里を交互に見ると、
愛里は子供の相手をしていて…
「…幻聴?…って、私かなりヤバくない?」
私は、そう猫相手に呟いていた。