記憶 ―惑星の黙示録―


「うん、楽しみだね?」

「で、洗礼って何?」


「ようこそ、って儀式だよ。」

そう笑顔で答えたリュウが、どこか寂しそうに感じた。

でも、何も言わなかった。
どうせ、教えてはくれないんだろう。


プエル鉱山は近付くにつれて、小さくなっていく。


私たちは、
青い空に溶け合って、
この空を駆け巡る風に…、

空の一部になれていたのかもしれない。




少し前までは、
疑問に思っていた事がある。


社会に出て忙しくなるにつれて、この社会や常識に慣れ、疑問にも思わなくなってしまった事。

日々の生活、目の前に積まれた難題に手が一杯で…。



私が疑問に思っていた事…、
それは、

私の世界の誰もが
『答えを知らない』事。



例えば…、

私たちは、どうして生きているのか。
なぜ動けるのか。


体の構造は習ったわよ?
心臓とか、脳とか…
神経がどうとか。

でも、
それはいいの。


科学的に解明された答えじゃなく、私が知りたかったのは、その意味。


何の為に生きているのか、
何の為に働くのか。


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