記憶 ―惑星の黙示録―
それから…
もう何も残っていない私は、
「仕事」に目を向けるしか無かった。
彼といずれ結婚するんだから…と、それまでは正直、仕事に本気で取り組んでなかった。
それが「仕事」しか無くなった。
ひたすら、上へ上へ…
「私は強いんだから」
「一人で生きていけるんだから」
そう…
突き進むしか、無かった。
その内に、
「主任」と呼ばれるようになった。
それも会社で一番若い、
22歳の「女主任」。
会社の期待の星。
そう呼ばれる一方で、
風当たりがキツい事も勿論だった。
『大した実力もないくせに』
『いや、奈央なら任せて大丈夫だよ』
『性格キツい』
『あれで本当に女かよ…』
その度、呪文を繰り返す。
「私は強い」
「私は、大丈夫」
『奈央さん!』
『主任!ご相談なんですが』
…私、頼られてる?
ここに居ていいって、
認めてくれるの…?
『奈央さん』
『主任!』
『主任!ご決断を!』
私は…、
大丈夫、強いから。
だから、いつも笑顔で。
感情を隠して…
強い、ツヨイ…
ツヨイ…