記憶 ―惑星の黙示録―
――…ゴォォー…
いつもより、
大きな風が過ぎていく。
私は高い崖の上に立っていた。
視界には青く澄み渡る、
空、空、空…
崖の下には、白い厚い雲。
それは、どこまでも遠く遠く、
見渡す限りに白く続く。
これが、雲海…ってやつ?
なんで…?
どうして、
こんな所にいるんだっけ…?
晴れ晴れとした空と。
息を吸い込めば、
久しく感じていなかった爽やかな気分。
雲海…
初めて目にする素晴らしい光景。
その中で。
私は、
この状況に震えていた。
気が付いたら、自分の体を支える術も何もない、こんな場所に一人ぽつんと佇んでいる。
どうやってこの場所に来たのか、記憶がない。
…というか、こんな場所を私が知っていたわけがない。
こんな危険な場所に、進んで自分から来ようとは決して思わない。
しかも、独り。
誰かに、連れて来られた…?
まるで、お酒を飲みすぎて二日酔いで目覚めた朝のように、気持ちが良いほどぽっかりと記憶を無くしていた。
…頭痛がないだけマシだけど。
「…ぇ…ぇえぇぇ~!?」
私は吹きっさらしの風が怖くなって、その場にしゃがみ込んだ。