記憶 ―惑星の黙示録―
やっぱり昨日の歓迎とやらが「洗礼」だったんじゃないの!?
それでなきゃ急に動物の言葉が分かるなんて、私の頭がおかしくなったとしか考えられない。
「…え?え?何!?」
困惑する私をよそに、アランは満足そうに笑って言った。
「すごいでしょ?奈央が寝てる間に、俺がちょっと細工をしました~!」
「…細工?」
「そう。言葉が通じないからってだけで嫌われちゃコンが可哀想だからね~?」
犬竜は相変わらず私の目の前で黒い尻尾をブンブンと振り、私の反応を未だか未だかと待っている。
ハルカちゃんはギシっと音を発て椅子から立ち上がると、犬竜の頭を撫でに来た。
「お兄ちゃんがナオちゃんに魔法をかけたの。コンの言葉が分かるように。」
でた、魔法…
「…ハルカ、何度も言うけど、俺の場合は正確には『魔術』…」
「…どっちでも同じじゃん。」
アランの言葉にハルカちゃんがムッと言い返す。
「…はいはい。もう、どっちでもいいですよ…」
アランは、ふぅ…と一つ溜め息をついて首を傾げて私を見た。
「…奈央~?」
固まったままの私を心配してか、私に手を振っていた。