記憶 ―惑星の黙示録―
私はアランに反応出来ず、呆然と犬竜に視線を戻した。
ワン!
『もう言葉分かるから平気だよなッ?俺の事!』
犬竜はそう言って。
いきなり距離を縮めると、私の胸元に両前足を掛けてきたものだから…
さぁ、大変。
「……!?きゃぁあぁぁ!」
『…きゃあぁぁあぁ~!』
私が叫んだものだから、
犬竜までビクッと体を強張らせて、対抗して叫び出す。
「あらら…」
『…はわわわわ…』
犬竜はウルウルと瞳を潤ませて、ハルカちゃんの胸へと逃げ込んだ。
ワゥン…
『…俺ショック。超ショック…うぅぅ。』
そんな犬竜の様子と台詞。
恐かったはず。
苦手だったはずなのに…
なんか、
…可愛い…?
言葉が通じるってだけで生じた心変わりに、自分自身で驚いていた。
私はゆっくりとベッドの端に腰掛けると、複雑な表情で手を伸ばす。
――…つん…。
最初はおっかなびっくり、
指先だけ。
私の指で押された黒い毛並みが、ハルカちゃんの胸でビクッと震えた。
ウゥ…
『…なにすんだよぉ。』
若干…唸られたものの、クリクリの瞳には涙が溜まっていて、それを見てしまったら恐くも何ともない。
ふっ…と、むしろ笑みが漏れた。