記憶 ―惑星の黙示録―


私はその場から立ち上がると、


「…いやぁ…なんか可愛いかも、と思って。」

そう言って、
犬竜の頭を撫でてみる。


私の手のひらにすっぽり納まる頭のサイズ。
ちょっと手の位置を誤れば、頭に生える薔薇のトゲ程の角がチクッと痛いけれど。
それでも…

あら、やだ。
この子、ふわふわ…


犬竜は瞳をキラキラと輝かせて、私を見上げていた。


『…もう、恐くないのかぁ?』

「…平気みたい。」


『…じゃあ、じゃあ!…俺とも友達になるか?』

「うん、コンちゃんと私は友達だね。さっきまでは恐がってたのに、ね。」

私がふふっと頬を緩ませると、私に初めて自分の名前を呼ばれた事にひどく喜んで、黒い尻尾をブンブンと振り回していた。



そんな中、
「ある物」が…、
私の目に止まった。

コンちゃんが動く度に、黒い毛並みからチラチラと首元に見え隠れするのは…

首輪についた「赤い石」?
今まで気が付かなかった。
それだけ、この子と距離を取っていたのね。


「コンちゃんの首輪、綺麗な石が付いてるのね?」

私はそう言ってハルカちゃんを見たが、彼女が答える前にコンちゃんから返事が返って来る。


< 70 / 262 >

この作品をシェア

pagetop