記憶 ―惑星の黙示録―
私はその場から立ち上がると、
「…いやぁ…なんか可愛いかも、と思って。」
そう言って、
犬竜の頭を撫でてみる。
私の手のひらにすっぽり納まる頭のサイズ。
ちょっと手の位置を誤れば、頭に生える薔薇のトゲ程の角がチクッと痛いけれど。
それでも…
あら、やだ。
この子、ふわふわ…
犬竜は瞳をキラキラと輝かせて、私を見上げていた。
『…もう、恐くないのかぁ?』
「…平気みたい。」
『…じゃあ、じゃあ!…俺とも友達になるか?』
「うん、コンちゃんと私は友達だね。さっきまでは恐がってたのに、ね。」
私がふふっと頬を緩ませると、私に初めて自分の名前を呼ばれた事にひどく喜んで、黒い尻尾をブンブンと振り回していた。
そんな中、
「ある物」が…、
私の目に止まった。
コンちゃんが動く度に、黒い毛並みからチラチラと首元に見え隠れするのは…
首輪についた「赤い石」?
今まで気が付かなかった。
それだけ、この子と距離を取っていたのね。
「コンちゃんの首輪、綺麗な石が付いてるのね?」
私はそう言ってハルカちゃんを見たが、彼女が答える前にコンちゃんから返事が返って来る。