記憶 ―惑星の黙示録―
――…ゴォォー…!
「…何、この風は…」
部屋からはギシギシと音をたてる木造の頼りない階段を下り、昨夜の酒場を抜けた。
そして外へ出ると…、
昨夜とは違う風景が、私たちを待ち構えていた。
まだ夜は帰りかけ。
昼は訪れてはいないようだ。
白く霞んだ霧が、闇夜に灯る何色もの街の明かりを包んでいた。
そして…
その街中にかかる霧を強風が引っ掻き回し、街の灯りが目の前で揺れている。
風が、
暴れまわっていた…。
「…台風…?」
ワゥ…
『あぁ~あ…馬鹿アランのせいだ。』
そう鳴くコンちゃんが、アランをじとっと見上げた。
「お兄ちゃんが昨日この街の上空で『風の道』を切っちゃったから…」
「そうそう、行き先を見失った風が…、ね。」
悪びれもせず、そう答えるアランの腕にハルカちゃんの平手打ちが飛ぶ。
え…
どうするの、これ。
この惨事、街の人にかなり迷惑なんじゃない!?
「…とりあえず、逃げる?」
アランはそう言い切った。
うわっ、最低。
そう感じたのは私だけではないようで、
「うわぁ…」
『馬鹿アラン超サイテー…』
そう罵られても見向きもせず、アランは前に歩き出した。