記憶 ―惑星の黙示録―
雲一つ無い、澄み渡る真っ青な空の下。
周囲にいた風たちをあの街がほとんど連れて行ってしまったのか、空気さえも穏やかだった。
すぅ…と、
たまに抜ける風は、
どこからともなく花の香りを私たちに運んで来ていた。
昨日は状況の変化に騒ぐばかりで、それどころでは無かったが、いざ自分たちが静かに歩いていると…
この世界の『静寂さ』に、
私は、戸惑いを隠せなかった。
――…静か。
考えてもみれば、
自動車も走ってない。
飛行機も飛んでいない。
勿論の事、電車も通っていなければ踏み切りも無い。
現実で聞き慣れた有りとあらゆる『騒音』が、ここには存在していなかった。
在るのは、
自然から生み出される音。
それは穏やかで美しく、
静寂さに慣れていない荒れ果てた私の心を徐々に和ませていく。
少し歩くと、
アランの言っていた通り広い水場へと辿り着いた。
河…というより、
海なんじゃないのか…
そう思ってしまう程にそれは遠くまで続き、遥か彼方には水平線まで存在する。
その河岸には舟があった。