記憶 ―惑星の黙示録―
「あのね、奈央。元々あの街は、この世界の街なんだよ。それが、妖精の世界と行ったり来たりしている内にハルカたち妖精族が棲み付いちゃったわけ。」
「…はぁ。それが?」
アランは体を紫色に光らせると、舟をそっと触る。
すると、
舟までが紫色に優しく光り出して、漕いでもいないのに河を進み出した。
「本来…洗礼を受けなければ、この世界には居られない。それを許す代わりに、『この河は越えてはならない』、それが約束なんだ。」
ワンッ!
『俺ってば、難しい事わかんねぇしッ。えへッ!』
「あたしも分かんな~い!」
ニコニコと舟に座る二人を見据えて、アランは呆れ顔。
「…嘘つけ。」
二人の心が読めない私でもこれは分かる。
二人は『分かった』上で、キースという人を探す為に御法度を犯そうとしているんだって。
「ほら、舟動いちゃったし。」
『俺も怒られてやるから心配すんなって!なッ?』
……誘っちゃマズかった?
二人は大丈夫だよね?
私は急に心配になってアランを見たけれど、
アランは何も言わなかった。
二人は行っちゃダメで、
私は『洗礼を受けに行く者』。
それが余計に不安になった。
どういう事…?