サナギとセカイ
『凪さーん、ごろにゃー』


シンクロした二人が、左右から私の腕に抱き付いて来た。


あーウッッゼェエエエー。

私は、ベタベタなのが嫌いなんだ。

だから、こいつらから隠れたのに。


「くそ。寄るなツインズ!邪魔だ邪魔だ。スゲーイタリアっぽいドリアが冷めンだろ」


うがー、と両腕を振り上げて双子をふり解く。

が、迂濶だった。

今度は、がら空きになったボディを左右からガッチリホールドされてしまう。


「てゆーか、凪さんさー」

「そんな解凍しただけのモンよりィ」

「こんなに食べ頃なアタシ達を」

「召し上がれよ♪」


コンビネーション抜群に言って、双子はダウンジャケットの脇腹に、猫の様に体をすり寄せてくる。


ウインクで見上げてくるこの双子、実はかなりレズっ気が濃い。

こいつらと会う度に、私の貞操的な部分がアラートを最大ボリュームで鳴らしている。


「だーっ!ベタベタ触んな!ゴロゴロ甘えんな!子猫かテメェら!引っ付くンなら、あっちのチンピラにしろ!」

「こっち来いよ、キティたちー」


振った先の阿呆丸出しのギャル男は、締まりのない顔で腕を広げた。


「えー!?ナシ君やだー。何かイロイロありえんしー」

「てかあの顔とかフツーにセクハラだしょー」

「曖昧に全否定!顔だけで犯罪!?」


双子が、そろってあっかんべー。

タカナシは轟沈し、テーブルに広げた緒手拭きの上に突っ伏した。

何か風でも拭けば、砂になってサラサラと消えてしまいそうだ。



つーかうぜーから、消えろ。



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