サナギとセカイ
何も、最初からこうだったワケじゃない。


私にだって、人並みに青春を謳歌していた時期があった。


人並みに恋愛もしたし、人並みに理想に燃えていたんだ。



私には、夢があった。

口にすんのも照れ臭ェんだけどさ、必死で打ち込んでたモンがあったのさ。


音楽だよ。

ギター。

信じらんねぇだろうけど、それなりのモンなんだぜ?



大学でツレとバンド組んで、そいつらとプロになろうぜって熱くなってたんだ。


音楽性っつーの?

そんもんで、一々ぶつかったりさ。

くっせーリリック敷き詰めた曲作っては、馬鹿みてー笑ったりさ。

ああ、そういや学祭は盛り上がったな。

一年の頃から、客を沸かしたりしてたんだぜ?



あの頃はホント、そういう打ち込める何かがある自分が誇らしかったな。

そういう自分が、格好いいんだって信じてた。

周りのさ、ただ就職の為にだけ大学まで来ちまった奴らとは違うんだって、私は満たれてるんだって。

今じゃ恥ずかし過ぎて百回は死ねるような事考えてたよ。


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