サナギとセカイ
それから一ヶ月して、私は退院し、その足で大学に退学の旨を報告した。

もうバンドに未練は無かったし、大人しく卒業して就職なんてのは意味が無くなってしまったから。


その日のうちに下宿も引き払って、私は誰にも行き先を告げずに姿を消した。


いっそ死んじまおっかとか考えもしたけど、止めておいた。

自殺してまで死に急ぐ理由も無かったし、苦しいとか痛いのダルかったから。



で、あれから三年。

今、私は空木ヶ丘の駅前でアホみたいな顔して座っている。


ただ大人しく終わりを待つだけの、死んでるのと変わらない日々。

バイトで食い繋いで、大噴水の前で馬鹿な連中とだべっているだけの毎日。

少し早い隠居みたいで、気楽なもんさ。



そんな私を羨ましいという奴もいれば、口喧しく心配してくる奴もいる。

けど、私にはそんなもの『どうでもいい』としか思えない。


だって私は、ただ淡々と残された日々を使い潰していくだけなのだから。



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