サナギとセカイ
「あぁ、イッキはいい子だ」


何となく褒めたくなる。

恐るべしイッキの優等生パワー。


ま、それもこれも日頃からパープーな馬鹿共しか見ていないからだろう。


「さ、佐凪さん」


くくく、ウブだねぇー。

こんくらいの事で真っ赤になって照れちまってまぁ。

お姉さん、コイツの事弄んの大好きだよ。


けど、


「あの、俺こっち手伝っても…」

「フロアの掃除テキトーにやっといて」


言い終わる前に指示を出す。

突き放すように。

あっち行けシッシッてな感じで。


イッキは何か言いたそうな口を閉じて、テンションだだ下がりでキッチンを去っていく。


「悪ィね。あんまガチになられると、私も責任とってやれねーのよ」


後輩くんの気持ちを知らない訳じゃない。

つーか、知ってて遊んでる。


そりゃ、性格わりー事してんのは分かってるよ?

けど、これが精一杯なんだ。

先があるなら向かい合位はしてもいいけど、生憎私は先が無いんだ。

ダメになるまでココで働くつもりなんだからさ、居づらくなるような事は避けてぇんだ。

だから、あいつが告りもしないうちに諦めるのを待つ。

これが私の選択、なんちゃって。



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