サナギとセカイ
んなうっすい関係だから、こいつの事で知ってるのなんてほんの少し。

例えば、ウザイ。

例えば、チャラい。

例えば………ん、それだけか。

ま、それだけで十分だろ。


「何すか!そんな見つめるくらい惚れてンすか?」

「ぶっ殺すぞチンピラ」


ゴミ箱にフリースローをしようと構えたチンピラの尻に、ヤンキーキックをお見舞いしてやった。


どんな人種が、こんなウザイ男に惚れるんだ?


「いてぇ…」


チンピラは尻を擦りながら、空き缶を放り投げた。

放物線を描いたアルミ缶は、カランと音を立ててゴミ箱に吸い込まれた。


「っしゃあ!見たっすか、凪さーん」

「おーすげーすげー…つーか腹減らない?」

「マジ適当…マジ不自然」


非難がましい視線がむかついたので、今度は明日とんがりを強調した靴を踏み付けてやった。


「あーッ!何するんすかァ!?これ買ったばっかなンすよ!」

「るせェな。んな、とんがらせたもん履きやがって。とんがってる俺かっけーとか思ってんじゃねーぞ、チンピラ」

「何の話っすか…」

「いいから、飯だよ飯。こんな美女が腹減ったっつってんだから、黙って奢っときゃいいんだよ!」


とか言ったら、急にキョロキョロしだすタカナシ。

ほう、いい度胸じゃないか。


「え、腹空かした美女、どこっすか?俺も飢えてンすよー、女に!」

「こんなっつったろ、サル」


グーパンを、人より高い鼻っ柱にお見舞いしてやった。


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