サナギとセカイ
鼻を押さえたチンピラを引き連れ、アタシはイタリア料理のファミレスへ入った。


暖かい。

あんな寒空の下にいたのが、本気でアホらしくなる。


「凪さん、俺あんま金ねーんすけどー」

「ならとんがり靴とその耳の金属売って金にしてこいよ」

「いやいやいや!どこのヤクザっすか。腎臓売ってこい的なノリじゃねーっすか。つーか、今日買ったばっかなんすよ!?」

「だったら、返品してこい。ああ、そだ!クリー二ングオフあンだろ、クリー二ングオフ。いいじゃん!便利じゃん、クリー二ングオフ」

「クーリングオフっすよ…つーか凪さん、知ったかっしょ?」


そんなやり取りをしながら、アタシ達は喫煙席に座った。

テキトーに注文してさっさと店員を追い払うと、すぐに煙草を取り出して火を付ける。


「あぁ、美味ー。サイコー」


煙が肺に染み渡って、寒さとウザイ男とつまらない仕事への苛立ちがスーッと引いていく。


< 5 / 29 >

この作品をシェア

pagetop