サナギとセカイ
「…で、無職のサナギさまの何が聞きたいンだよ」

「や、そんな怒んないで欲しいんすわ」


タカナシは、まぁまぁとジェスチャーする。


「凪さんは将来どうすんのかなーってだけっすよ。今のバイトを続けてくのか、それともどっかに就職すんのか」

「将来……か」


タカナシは水を煽って、机に顎を乗せた。


将来か。

考えた事なかった……なんて事はない。

が、真面目に考えた事はなかったな。

つーか、考えても仕方ないし。


「俺さっき言ったじゃないすかー。夢がねーって。だからやりてェ仕事もなけりゃ、働いて金貯めてやりてェ事もねーんすわ。そんなら遊びながら、バイトしながらの生き方でもいいんじゃねーかなって」

「だから、そんな生き方の先達である私の話を参考に?」

「ま、有体に言えばそーすね。一意見として判断材料にしてェんすわー」


こんなチャランポランでも、一応悩むということか。

しかし、私がこんな風にフラフラ生きてんのはそれなりにワケがある。

ま、実際夢も希望も持っちゃいないが。

それでも、その原因っつーのがなけりゃ、今頃こんな風に都市の片隅のファミレスで煙草ふかしちゃいなかっただろう。


「べっつに話す事なんてねーよ。今の私を見りゃ十分だろ?」

「確かに。凪さんは分かりやすいっスわ。楽しそうに生きてるすよねー。不安とかねーンすか?」

「あるっつーの。毎日が綱渡りだっつーの。つーか、テメェはいい大学行ってんだからよ、進んで無職になる必要はねーだろ」



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