勇者ゲーム
「嘘つけ。
眠いんでしょ?
寝てもいいよ、起こしてあげるから。」
あたしは隣の部屋にあるベットを指差して言った。
来客用のベットだ。
「…………あれ、国咲の?」
じっとベットを見て山城が聞く。
「ううん、来客用。」
そう言うと、あぁ、そう、と素っ気無く返事してふらふらと隣の部屋へと行った。
よっぽど眠いんだろうな。
「人ん家で寝るの、なんか悪いなぁ。」
とかなんとか言いながらも、すぐに寝息が聞こえるほど高速で寝てしまった。
あたしはやることもなくて、そうっと山城の寝てる部屋へ入る。
小さく丸まった状態で寝ている山城の背中は、いたく寂しい。
それを見てると急激に襲ってくる虚しさ。
あたしを見向きもしない後ろ姿に感じる、虚しさ。
あたしがいつもひたむきに見つめるのは、この後ろ姿。
虚しい後ろ姿は、あたしにとっては輝かしい後ろ姿に見えていた。
ずっと、今まで。
彼の後ろ姿は私にとってはどう頑張っても追い抜くことの出来ない壁だった。
あたしの絶望をあざ笑うかのように、阻む壁……。
あたしは今、その目の前にいる。
手を伸ばせば、すぐに触れる。
足を伸ばせば、簡単に蹴飛ばせる。
それがわかった小さな背中は、虚しい。