勇者ゲーム


「…………何泣いてんだよ。」

そう言って笑う山城。

「……泣いてない…。」


無自覚に流れた涙の意味は、わからなかった。


でも、あたしは心のどこかでわかっていた。


山城は、抱えきれない何かを大事に守っていて、あたしには側にいる場所さえない。


きっと、あたしは…あたしの気持ちは、響くことはない。


好きだと言った後に気付いた、彼の心に、この時のあたしはきっと泣いていたんだ。


「…………国咲。」


いつの間にか側に来た山城は、強引にあたしの腕を引いた。


バランスを崩したあたしは山城の方へ倒れてしまった。


…山城は、あたしを抱きしめた。


「…やまし」


「国咲…。
泣くなよ…。」


無気力でなく、強くもない、弱々しい声。
初めて聞く山城の声。


「……ごめん。
俺、最低だ……。」


「………え?」


震えている声。
きっと、泣いてる…。


「…どうしたの?」


「…ごめん。」


…どうして
どうして謝るの?


< 6 / 19 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop