最期の記憶【短編】
声をする方に反射的に振り向いてしまった。
私の名前とは限らないのに…。
「サラサ!サラサ!!」
ガシッと肩を捕まれる。
――あぁ私のことなのね
「あなたは――…?」
「…嘘だろ?」
目を見開く彼。
ただその声が愛しいと感じた。
――愛しい?何故?
「ごめんなさい…私…記憶がないのっ」
「記憶が、ない?」
「はい」
「……っ…」
辛そうな顔をする彼…
「ねぇあなたの名前は?」
「尼崎 成海(アマサキナルミ)」
「私はなんて呼んでたの?」
「成海」
彼…いや、成海は
どこか寂しそうだった。
「私は?」
「岸部 沙羅早(キシベサラサ)」
――きしべさらさ
私の…名前―…。