─Quality of love─
段々激しくなる実花とは対照的に、俺は冷めていた。
意識だって明確で、理性を失っていく実花を客観的に眺める。
ふと、横たわったまま黒猫のことを思いだす。
その感触は、堅くて冷たくてゴツゴツしていて……
どこかを見ているようで、どこも見ていない瞳に
背筋が凍った。
これが“死ぬ”ということなのかと思った。
「……今日、死んだ黒猫をみたんだ…」
俺の上に跨る実花は一瞬怪訝な顔をした。
「……車に引かれたんだと思う…ボロボロだった……触ったら、もうなんか生きてないことが感触で伝わったんだ……真っ黒な黒猫……野良だった…それから…」
「そんなこともういいから!集中してよ!」
実花は俺の言葉をさらりと交わし、キスをしようと顔を近づけてきた。