FLASH BACK
ワックスの剥げた廊下を、
かかとを踏みつぶした上履きで走る。

廊下の窓から差し込む日差しが強い。

しかも、そのせいで気温も上昇している。
暦の上ではもう秋だというのに、
感覚的には春や初夏なんじゃないか、
という気分になる。

事実、あたしは
白いワイシャツだけで過ごそうとしている。
左胸のポケットには、
美術の時間に付着してしまった緑色の絵の具が
存在を主張していた。

着ていた紺色のブレザーは生徒会いつに置いてきてしまった。

ワイシャツだけでもまだ暑くて、
あたしはその袖を二つ折り曲げた。

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