Alice Doll


***


 終礼を告げるチャイムが鳴った。

 いつもはチャイムが鳴って、最低でも十分は延長する先生が、今日に限ってチャイムと同時に終わった。
 なぜだろう、他の先生に比べて終わったときの嬉しさが大きいのは……。

 ガタガタと席を立つ生徒たち。これから教室に戻ってHRがあるのだ。

 しかし生徒たちは、これから起こることに少しがっくりすることとなる。


「やったな! 珍しく定刻通りの終了だ……ってあんま嬉しそうにないな。どした?」

「いやー、早く終わったのは嬉しいんだけどさ……。先生いっつも遅いのが定番じゃん?」

 うんうん、と友人の男は相槌を打つ。

「だからさぁ、佐藤もいつも通り来るんじゃないかって……」

 佐藤とは彼らの担任の名前である。四十を過ぎて未だに結婚はしていないらしい。
 だが、目撃情報から彼女はいるらしい。それをネタに、生徒たちから良いようにからかわれることも少なくない。
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