Alice Doll


 有り得なくはない。何故なら佐藤は常々、時間を図って来てるんだからな、と生徒に言っていたのだ。

 つまり、彼らが遅く終わるのを見越した故での判断をしているということだ。

「あ゙ー! マジ、早く終わった意味ねぇー!」

 少年の言葉に頭を抱えると、くそう、と暴言を吐いた。

 嫌なところに気付いちゃってごめん、と半笑いで返す少年。しかし、周りで聞いていた者たちの気持ちも沈んだことなど、彼らは知る由もない。




 結論を言うならば、やはり少年の予測は正しかった。
 担任の佐藤は「お! 今日は何か早かったらしいじゃないか! めっずらしいなぁ」と、おちゃらけた口調で教室に入ってきた。

 軽く空気読め、という空気が流れるのもさして気にせず、彼はいつも通りHRを遂行した。


「はい、それじゃあまた月曜日! 風邪引くなよー、解散!」

 いつものようにいつもの言葉で締め括り、生徒たちもガタガタと席を立つ。そして、友と挨拶を交わし、それぞれに教室を後にするのだった。
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