Alice Doll
すでに暗くなりかけている帰り道を、由衣は一人で歩いていた。
優芽と莉緒の家は同じ方向だが、彼女の家は方向が違った。
そのため、彼女は一人で帰るのが常となっているのだ。
結局、帰るのはいつも通りになった。何だか損をした気分だ、と心の中だけで愚痴る。
…──ゃあ
何だろう。
ふと足を止める。聞こえたのはか細い猫の声。か細いからと言って別に弱っているわけではなさそうだ。どうやら少し遠くから聞こえてくるらしい。
にゃあ。
あ、今度ははっきり聞こえた。猫だ。声質からして子猫じゃないなぁ。どんな猫だろ。
そう彼女が思った時だった。真っ黒な猫が彼女の目の前にスタッと降り立った。
わっ、と驚きの声を上げ、由衣は後ろに二、三歩後退った。その拍子に手が緩み、持っていた家の鍵を落としてしまった。
チャリン、と小気味の良い音が響き、鍵が地面を滑る。
あ……。と少女は声を上げた。