Alice Doll


 おや、と奏は不思議そうな表情を見せた。セリアもまた、同じような表情を見せ、小首を傾げる。

「あの……。私、何か変なこと、言っちゃいましたか?」

 オドオドと言う由衣に、奏はいやいや、と首を振った。月の光を落としたような髪が、サラサラと空気に靡く。

「変なことは何一つ言ってない。だけど驚いたんだ。由衣さん、高校生だよね?」

 制服(汚れは館に入ったとき、ある程度、セリアに落としてもらった)を指しながら言う奏に、由衣は大きく首を縦に振った。

「由衣さんは引っ越してきたばかり?」

 まさか、と首を横に振る。

 ふうん、と鼻を鳴らして肘掛けに肘を付いた。その状態のまま、目だけを動かしてセリアを見、続けて由衣を見る。
 そして、ああ、と一人納得すると、面白そうな表情をした。


なぜ、この人はそんな質問をするんだろう。この人はなにを言いたいのだろう。

 そんな由衣の疑問は次の奏の発言により全て解決される。


「由衣さんは、『人形館の噂』を知ってる?」
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