Alice Doll
どうしよう、と悩んでいると、奏様、と控え目な女性の声が耳に飛び込んで来た。
この声は、と扉の方に目を向けると、案の定、セリアが立っていた。
「電話をお持ちいたしましたわ」
そう言ってセリアは手に持った子機を奏に差し出す。奏はそれを受け取らず、彼女に、と由衣を指した。
はい、と歯切れよく返事すると、手に持ったその子機を再度持ち直す。
どうやら先ほどの話通りに電話を持ってきてくれたようだ。
黒電話かアンティーク調の電話がくると思っていた由衣は、その一般家庭ならどこにでもありそうな電話を見て、少しだけ残念に思うのだった。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます。えっと……、今、かけるんですよね?」
「うん。そうしないと食事が終わってからじゃ遅くなるし、ご両親が心配なさるだろう?」
「ああ、はあ……」
奏のもっともな意見に由衣は曖昧な返事で返した。
できれば一人の時にしたかった。なんだか食事を前にして奏とセリア、二人の前で電話をかけるのが、意味はないがとても恥ずかしい気がする。
「えっと、じゃあ……」