Alice Doll


 カチャカチャと食器同士が音を立てる。
 セリアが電話を持って行っているこの間、二人は終始無言で食事を続けていた。

 由衣にとっては気まずく、心臓が跳ねに跳ね、食事どころではないことこの上ない。
 だが、奏には特に気まずいこともないようで、涼しい顔で次々と料理を口に運んでいる。

 しかし、無言でいると、由衣には考える時間ができた。

 勿論それは、人形館とこの住人たちについて。

 先ほどの奏の話から、ここには彼とセリアだけでなく、他にも(使用人とはいえ)人がいることが分かった。ならばなぜ、屋敷の人以外の人に認知されていなかったのか。

 人形館なんて名前で呼ばれるようになったのも、人気がない以前に誰も『人の姿を見なかった』のだ。
 しかし、昼夜を問わなかったものの、人影だけはよく目撃されている。


 だからこそ、この館は人間ではなく、人形が住む館、人形館としてこの辺りで広く認知されている。



 しかし、食事中に口を開いても良いものだろうか。

 ふと、由衣の心に疑問が湧いた。
 自分の家では、普通に食事中なんてことは関係なく喋っていた。テレビを見ながら、会話しながら、食べ物を食べるなんて器用な真似をしていたものだ。
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