Alice Doll
食事中に家族で会話を交わすのは、とても良いことだと由衣自身は思っている。
日中会えない家族と、何気ない会話でも盛り上がることができる。家族の見えない所が想像するしかないとは言え、分かることはとても嬉しい。
それに何と言っても食事が美味しくなる!
だからこそ、由衣は食事中の、ある程度の会話なら大賛成である。
しかし、それはそれ。由衣の家庭での許される範囲内だ。
自分の庭と他人の庭を同じと見るのは間違っている。
それは高校生である由衣にすら分かること。特にこんな大きな家だ。マナーにはうるさいに違いない。だからこそ、口を開くのが躊躇われるのだ。
口の中がずっとむず痒く、飲み物も飲んでいるはずなのにカラカラと渇いている。
……はぁ、と思わずため息をつきたくなる気持ちを抑え、空気ごと出かけた溜息を飲み込む。
食事は楽しむものだと思っている自分が、それを崩すことになってしまう。それはいけないと由衣はスプーンですくったスープを口に運ぶ。少し冷えてしまったことをとても残念に思えるほど、深い旨味が口の中に広がっていく。
「そういえば……」
「は、はい」
「由衣さん、やっぱり女の子一人だけでこの夜道を帰らせるのは危ないし、今夜はセリアに送らせるよ」
「は、はぃいいい!?」
思わず、スープを吹き出しそうになった。