Alice Doll

人形館からの帰り



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「ごちそうさまでした」

 由衣は満腹感を味わいながら手を合わせた。それと同時に奏も向かい側で合掌する。

「うん。今日も美味しい食事をありがとう、と夜壱谷(よいだに)に言っておかないといけないな」

「よいだに、さん? がこれを一人で?」

「いや、まさか。さすがにないな。魚蔵(うおくら)という者と一緒にだよ。だけど、夜一谷が料理長だからね。彼に伝えとくんだ」

 へぇ、と適当に相槌を打ちながら、由衣は料理長とかまでいるなんて、と内心苦笑を浮かべる。
 あまりに今までの自分の生活とかけ離れたものを見続けているせいか、ライトノベルの世界にでも迷い込んでしまったかのような気分だ。

 そういえば、と由衣は自身の腕時計を盗み見る。指針はすでに九つを越え、十を指そうかとしていた。
 そんな時間の流れに驚きながらも、今日を振り返ってみれば、それも当たり前なのかもしれない。

 猫を追いかけ始めたのが放課後で、暗くなるまでそれをしていた。それから、セリアさんに会って、奏さんに会って。
 それに、緊張したせいもあるが、いつも以上にゆっくりと食事をした。

 だから、こんな時間になっているのも、よく考えれば、そんなに驚くこともないのだ。
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