Alice Doll
ばふっ、と音を立てベッドに転がった由衣は誰ども無しに「疲れた」と呟いた。
あれから、人形館から彼女の自宅まで、歩いて三十分ほどかかった。
その間、セリアと沢山とはいえないが、それでも、滞ることなく話をした。ほとんど由衣が喋り、セリアが話を聞く、といった関係になっていたのだが。
「奏さんもかなり不思議な人だったけど、セリアさんも何か不思議……」
思わずそう、口に出してしまってから思う。
『不思議』ではないのだ。奏はともかく、セリアにその日本語は当てはまらない。由衣は直感的にそう考える。だからと言って、その胸に溜まるわだかまりにピッタリくる表現がぱっと思い浮かばない。
考えても考えてもそれに近いものしか出てこないことに、由衣は多少の苛立ちを覚えた。
そう、どちらかといえば、不思議というよりは…──
「変、なんだよね……」
何が、と言われてもはっきりとは答えられない。だが、今はそれ以上にピッタリくる言葉を探し出せない。
苛々とベッドの上で寝返りを打ち続けるのにも飽き、由衣はぎゅっと目を瞑った。