Alice Doll


 早くも明日は再び、あの屋敷に向かわなければならない。残念ながら、道はばっちり分かっている。面食いだと認めたくはないが、奏に会いに行くならそう悪くない気がする。

 でも……。

 人通りがいくら少なかろうと、そこはかの有名な人形屋敷。向かう途中、友人とばったり鉢合わせ、人形屋敷に行くことがバレる可能性もある。嘘でも何でもついて誤魔化そうと思うが、こんなとき、出てくる予想は悪いものばかりである。


「日曜日は晴れれば庭でティーパーティーをしようと思ってるの」

 ふと別れ際のセリアの声が蘇った。細く白く長い指を顎に当て、セリアは確かに言った。ティーパーティー、と。

「ティーパーティー……? えっと……」

 由衣が小首を傾げると、セリアは目を細め、小さく微笑む。

「軽いピクニック、みたいなものかしら。ケーキと紅茶を外で食べながら団欒するの。どうかしら?」

 どうかしら? と言われても、どうなんでしょう、としか答えられない。どうなんでしょう、はさすがに失礼かと思い、受け答えに悩んでいると、嫌に靴音が耳についた。夜の静けさも相まってか、余計にカツンカツンと音が響く。

 自分のローファーも結構な音を立てているのだが、それ以上にセリアのピンヒールが鋭く耳を打つ。
 ほぼ背伸び状態になる高さでよく歩けるなぁ、と由衣は自分がはくのを想像して少し顔をしかめた。自分だったらとても痛くてはいてなどいられない。
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