Alice Doll
なるほどー、と適当に話を合わせる。自然と会話はそこで終了したわけだが、セリアさんはまだ、物思いにふけっているみたいだった。
多分、さっきの度忘れの言葉を思い出したいんじゃないかな? 私も知りたいけど。
とか思っていたら、目の前の並木道に街灯、自販機、赤い屋根の可愛いお家……。
その道に見覚えがあることに気付いた。
「あの、セリアさん!」
「何でしょう?」
「もう、ここまで来たらウチ近いんで、大丈夫です」
今度こそ、と息巻いてセリアさんの目をまっすぐ見て、もう一人で帰れるという旨を告げた。セリアさんのガラス玉みたいな綺麗な目からはほとんど感情が読みとれなかったけど、思ったより大分あっさりとそれを認めてくれた。
「じゃあ、明後日また」
会いましょう、とセリアさんは手を振って背中を向ける。風にふわりとなびく髪、白くて柔らかそうな肌、細い腕、長い脚……。後ろ姿だけですごく綺麗なんだし、私からしたら、襲われそうなのはむしろセリアさんだ。
それにしたってこんな美人がいたら、それこそ噂になっても良さそうなのに。
それほどに、人形館の噂がそれを勝っていたのか。