Alice Doll


「帰ろう」


 そう、誰ともなしに呟いて、私もセリアさんに背を向けた。

 結局、はぐらかされたのか分かんなかったな。奏さんとセリアさんの関係。

 日曜日、行ったら教えてくれるだろうか。


「って、完全に行く気になってるじゃん、私。ただいまー」

「あらー、今日はお泊まりじゃなかったの?」

 んふふ、と出迎えてくれた母は、気持ち悪いくらいにニタニタしていた。こんな時間になったのだから、怒られるのを覚悟してたのに、少し拍子抜けた気もする。
 そんな母を一蹴して、靴を脱ぐと、どって疲れが押し寄せてきた。多分、今までの緊張がほどけたんだろう。気を抜くと涙まで出そうになってしまった。

 高校生にもなって母親の前で泣くのはさすがに勘弁して欲しい。そこは必死に堪えつつ、あとはそのまま、今に至る。


 キュ、とシャワーの栓が小さく音を鳴らして、温水が止まる。ぽつぽつと髪から垂れる滴は、タオルを巻いておくことにして、浴室から出る。
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