Alice Doll
人形館とお茶会
うーん、我ながらポジティブ&アバウト思考……。
で、でも誘ったのはあっちだし? 時間教えとくのは向こうであって私には責任はないはずでしょ? 多分。
「由衣? ただいまー」
「わ、お母さん! おかえりなさい」
時計をみると針は17時を指している。帰ってくるのが早いな、と思ったものの、それもそのはず、今日は土曜日である。土曜日の仕事は半日で終わるのだから。
それより、体感時間がいつもよりずっと短いことに由衣は驚いていた。いつも以上に過ぎ去っていく時間の速さが恨めしくある。
「お母さん、明日、私出かけてくるから」
「あら、そう。珍しいわね。いつもなら、いちいちそんなこと報告しないのに」
「そうだっけ?」
「そうよ。ま、楽しんできなさい」
自由に遊べるのなんて学生の間しかないんだから、といつものように由衣の母は笑った。
その笑顔に、由衣は安心感を覚え、何となく明日も大丈夫だろうという根拠のない自信を持つのだった。