Alice Doll
「それに、奏さんには、セリアさんっていう物凄い美女がいるんだから!」
「あらっ、それは残念ねぇ」
イケメンの息子ができると思ったのに……、と母が残念そうに呟く。その反応に、由衣は思わず頬をぷぅと膨らませた。
「第一、奏さんのような人は、ウチみたいな一般家庭には似合わないもん」
『一般家庭』を強調して言う由衣に、今度は母親が眉を少し吊り上げる。
「一般家庭のどこがいけないの。奏さんだって王様でもない限り、一般家庭の人間でしょう」
「ウチみたいな所帯じみた家庭とは別格だもん。年収も平均的だし」
「あらぁ、由衣。その言葉は、お父さんに喧嘩売ってることになるわよ。ねぇアナタ」
「ん……む」
母と娘の喧嘩に、いきなり巻き込まれた父親は困ったように頷いた。巻き込まれたくないので黙っていたが、その努力はあまり実を結ばなかったようだ。