Alice Doll
「ごちそうさまぁ」
そんな親子を総スルーして立ち上がったのは、由衣の弟である佑樹だ。
そして、母娘に冷たい一瞥をくれると、佑樹は食器を持って台所へ直行した。
「佑樹はクールねぇ」
「母さんたちが、そんなだから必然的にそう見えてしまうだけだと思うけど?」
「いやー、お姉ちゃんから見ても佑樹はクールボーイだよ」
「はいはい」
これ以上付き合いきれないよばかりに、肩をすくめると、今度こそ食卓を後にする。
佑樹が去った後、由衣と彼女の母親は至って自然に食事を再開した。
我ながら、面白い家族かつ、幸せな家庭で育っているとは思う。
父と母は喧嘩こそ時たまするものの、大袈裟な事態にまで発展することはないし(だいたい、食事の味付けとか、私たち子どものことでとか)弟は弟であんな感じだから、姉弟間でも喧嘩なんてほとんどない。というか、ふっかけても流される。
弟が二階へ上がる軽い足音を聞いていると、母親がじゃあ、夕飯は準備していなくても大丈夫ね? と確認をとった。