Alice Doll

「お、お待たせしました! すみません、遅れて……」


 待ち合わせ場所には、セリアがいた。セリアは気にしていないと首を振る。むしろ「来てくれて嬉しいわ」と微笑んだ。

 今日のセリアはタイトスカートに薄手のブラウスと、先日の格好より大分落ち着いている。


 由衣は呼吸を整えようと、胸に手を当てる。家から走ったものの、結局、五分ほど時間を過ぎてしまった。

「大丈夫?」

「はい、ぜんぜん……」

 否定とも肯定とも取れる日本語に、セリアは落ち着いてから行きましょう、と笑った。

 その申し出を有り難く受け取ると、由衣はその場を目だけでぐるりと見渡す。
 日曜日のお昼ということもあってか、周りを行き交う人は少なくない。

 なのに、セリアに目もくれない。こんなに綺麗な人がいるのに。
 人間の目は見たいものしか見ない。それはどうやら本当らしい。
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