Alice Doll

 とりあえず、ここは私からなにか言うべきかな。なんか、喋り辛そうだし……。

 由衣はおどおどして、最早挙動不審になりつつある少女を見て、微笑みかける。

 セリアが何も言わないのは、あくまでも本人に自己紹介をさせるつもりだからだろう。


「えっと、初めまして、ノエルさん。私は、宮音 由衣といいます」

「初めまして、わたしはノエル。敬称いらない。ノエルって呼び捨てで大丈夫……」

「ほんと? じゃあ、私も由衣って呼び捨てでいいよ」

「ユイ?」


 そうだよ、とノエルに微笑むと、ノエルは何度か頭に刻み込むように由衣の名前を復唱した。

「ユイはカナデ、すき?」


 ノエルが上目遣いで由衣に問いかける。恋愛云々といった意味合いではないことが、ノエルの雰囲気から分かるため、由衣は素直に頷いた。

 途端に、ノエルの紫の瞳が輝き、分かったと笑顔をみせる。
 身長が由衣より少し低いせいか、年の近い妹を持ったような気持ちになる。
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