Alice Doll
やはりいないらしい。先ほど自分が聞いた声は気のせいだったのだろうか……?
それから暫く粘ったものの、誰かがいる気配などはやはり見受けられなかった。
「残念……」
つい、そう声に出してしまった。はっとして辺りを見回すが誰もいない。むしろこんな所に人がいることが珍しいのだが。(普段からこの屋敷は気味悪がられ、あまり近づきたがる者はいないのだ)
それでも諦め悪く、二、三度屋敷内を見回してみるが、それでもダメだとわかると、少女はくるり、と屋敷に背を向けた。
その時だった。
キィ、という微かな音を彼女の耳は確かに拾った。それは扉が開閉する音。
先ほど静まった興奮が火山の噴火のように、再び一気に高まるのを感じた。
彼女が振り向いた瞬間、先ほどと同じような、だが微妙な音がした。少女は瞬間にそれを扉が閉まる音だと確信し、なりふり構わずに門扉を鷲掴みにした。