Alice Doll
「有り得ない有り得ない。夢でも見たんでしょ?」
「優芽(ユメ)だけにね!」
宮音由衣(ミヤネ ユイ)は、弁当に入っていたグリンピースを箸でどかしながら、友人のその話を一蹴した。
もう一人の友、莉緒(リオ)が下らない洒落を言ったようだがそこはスルーだ。
今は昼休み。宮音由衣、眞中莉緒、村江優芽は、高校入学当初から、出席番号も近いとあってか仲良く昼ご飯を食べる仲だ。
そんな中でも噂話が大好きな優芽は、昼休みが始まるやいなや、一気にしゃべり倒した。
冷静な友人たちの隣で、今の今まで話していた当の本人は至って真面目だった。
しかし、冗談としかとってくれない友人たちに、あからさまな不満の表情を見せている。
だが、いくら一所懸命に話そうにも一人は呆れ顔、一人は笑いをかみ殺したような反応しか返してこない。
こいつらに話したあたしがバカだった……。
優芽は眉間を押さえて、深いため息をつくのだった。