妹系男子。



母は元々身体が弱い人だった


鈴と俺を産むとなった段階で
長い命は望めなかったらしい


双子を生む、ってそういうこと



命こそはとりとめたものの
それから体調が全快になることはなく

俺達が中学を卒業する時に
静かに息を引き取った



有り難かったのは母の思い出があること

悲しいのはもう作れないこと



母さんがいなかったら
鈴がアイドルになることはなかった


母さん程
鈴を応援した人はいなかったから



父親は家族の生活費と
母の治療費を稼ぐ為に
家を空けがちだったから

小さい頃から
母と鈴と三人ですごす時間が多かった



生活の中心であった
母がいなくなるということは
俺達にとっては絶望でしかなかった


双子でなければ
乗り越えられなかっただろう



だからこの町に逃げて来たのかもしれない




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