妹系男子。
「お母様の側にいてあげて下さい」
と、看護師に呼ばれた
夢のために努力している鈴
遠くで働いてくれている父
両者を差し置いて
俺は母さんの残り少ない命を見守った
―――
―――
母さんの瞳は変わらず透き通っていた
体調のわりには
表情はいつもよりサッパリしており
“死”なんてますます想像できない
――死ぬのだ
そう思うと
恐ろしくも正体のわからない
得体の知れない恐怖にはばかられる
俺は複雑な面持ちのまま母の目を覗いた
「…麟太郎」
母さんは笑顔を見せた
背景は白いベッドシーツ
ハハ「いつも私といてくれ有り難う」
その笑顔はあのまぶしいものだった
ハハ「泣かないの!」