プリンセスの条件
「翔太ぁ……いつもありがとね?」
「なんだよ、今さら」
「だってあたし、翔太がいなきゃダメなんだもん」
「……」
「ふふ。翔太の香り、だぁーい好きッ」
その瞬間、あたしの身体はドサッとベッドの上に倒された。
あたしを見下ろす翔太の瞳がユラユラ揺れている。
「翔太?」
だんだん縮まる2人の距離。
「マイが悪い」
「え?」
「オレを煽るから」
そう呟いて翔太は強引に唇を重ねた。
久しぶりの翔太とのキス。
あたしのファーストキスは翔太。
おそらく翔太も同じ。
小学校低学年の頃までは、挨拶みたいにいつもキスしていた。
だけど“キスしてる”なんて感覚はあたしたちにはなかった。
それがいつの間にかキスしなくなったのは、キスの意味を知ってしまったからだ。
『大好きな人とするもの』
この意味を知ったから。
あたしも翔太もお互い大好きだけど、“キスをしていい”大好きとは意味が違うと気づいた。
あれから10年。
また2人の唇がこうして重なる日が来るなんて──…